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追憶のICカード

松山 さくら

全2話[3,194文字] 純文学〔文芸〕
 高校生の主人公陽茉莉は、最近一緒に住み始めた母方の祖母との関係に悩んでいた。早くに夫を事故で亡くし、一人で母の陽菜を育て上げたという祖母。
 ある日、陽茉莉は家の中で、パスケースに入ったICカードを見つける。母のものではなく、駅の券売機で利用履歴を印字してみると、そこには仁川、三宮、そして宝塚の駅名があった。陽茉莉は、母とともに首を傾げる。
 ある日、陽茉莉は友人の彩香から、大学のオープンキャンパスに誘われた。向かったのは山手学院大学。見学を終えて大学の正門を出ようとしたとき、陽茉莉は祖母によく似た女性を見つける。後を追ってみたが見失ってしまった。
 別の日、家で過ごしていた陽茉莉は、例のパスケースの中に、一枚の写真シールが入っていることに気づく。着ている服装から、写っているのは祖母らしい。よほど慌てて撮ったのか、背景の目隠しがめくれていて、外の景色が映り込んでいる。
 それらのことを母に話していたとき、二人の脳裏にある言葉が思い浮かんだ。それは、『認知症』という言葉。家族の知らないうちに、祖母が電車に乗って徘徊しているのではないかという疑念だった。
 高校では、友人の彩香が、学校の先生になるという夢を抱いて頑張っていた。そんな彩香が見せてくれたのは、ボランティアを一緒にやっているという女性から、誕生日にプレゼントされたというオーダーメイドのプラチナのネックレス。知り合いから貰ったにしては高価過ぎる贈り物だった。
 そんなある日、祖母の部屋で彩香がつけていたものと同じネックレスを偶然見つけた陽茉莉。オーダーメイドで作られたはずのものが、祖母の部屋の中にもある。しかも、誰かにプレゼントするために置かれていたそれを見て、陽茉莉は推理を始めた。
 頭の中に浮かんだこと、それはある意味で陽茉莉の出生にもかかわる重大なことだった。もしかして、彩香とは血が繋がった間柄ではないのか。ICカードに残された三つの駅名と数々の手がかりをもとに、そう確信した陽茉莉は、祖母が若かりし日々を追憶するために、あのICカードを使って電車に乗っていたのではないかと思い至った。
 そして、迎えた自身の誕生日。陽茉莉は、祖母と一緒に炬燵に入っていた。祖母がそれとなく語ったエピソード、それを聞いた陽茉莉は、祖母が新たな一歩を踏み出せることを願って、ようやく打ち解けることができたのだった。

女主人公 学園 現代 ハッピーエンド 青春 神戸 三宮 宝塚 ミステリー 家族
全2話[3,194文字]
各話平均1,597文字
[推定読了0時間7分]
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最新作投稿:2026年08月30日(13:30:00)
 投稿開始:2026年08月29日(13:30:00)


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