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短編.
妻が上司と不倫した日、私はドアを封鎖して祝賀会を開いた
熾星
全1話[13,438文字] ヒューマンドラマ〔文芸〕そして、彼女が会社で四半期の営業成績トップに選ばれた日でもあった。
俺は仕事を早めに切り上げ、花束を抱えて、彼女が勤める会社へ向かった。莉奈は東京・品川にある広告代理店で営業をしている。結婚後、戸籍上は俺の姓になったが、会社では旧姓のまま「白石莉奈」として働いていた。
エレベーターの扉が開いたとき、俺はまだ、どんな顔で花を渡そうか考えていた。
その瞬間、視界に赤い文字が流れた。
【これは刺激が強すぎる。四半期トップの営業と営業本部長が、電気設備室で何をしているんだ】
【黒川部長、あの年でずいぶん元気だな。白石さん、立っているのもやっとじゃないか】
【夫は花束を抱えて迎えに来ているのに、裏切られているとも知らない】
俺はエレベーターの前で立ち止まり、指先に力を込めた。
廊下の突き当たり、給湯室のそばに電気設備室がある。ビルの電気設備や配線が収められている場所で、普段は鍵がかかっている。鍵を持っているのは、ビルの管理会社、防災センター、そして会社の総務部だけだった。
扉の隙間から、女の声が聞こえた。
三年間、何度も聞いてきた声だった。
「黒川さん……もう少し、優しく……」
男の荒い息が混じる。
「莉奈、こういう場所のほうが燃えるんだろ?」
「早くして……直人、今日迎えに来るって言ってたから……」
俺は腕の中の花束を見下ろした。包装紙はまだきれいで、カードにはこう書いてあった。
結婚三周年おめでとう。いつもお疲れさま、莉奈。
俺は扉を叩かなかった。
踏み込むこともしなかった。
(各話平均13,438文字)
[推定読了0時間27分]
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最新作投稿:2026年07月05日(17:00:00)投稿開始:2026年07月05日(17:00:00)
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